2004年11月25日

「読書『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』」行動記録/日記

帯より
世界幻想文学大賞受賞
『たったひとつの冴えたやりかた』のティプトリーが贈るファンタジイ連作集
──解説:越川芳明(ラテンアメリカ文学)
折込の新刊案内より
世界幻想文学大賞受賞。「わたし」がキンタナ・ローで耳にした美しくも儚い三つの物語。

『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』

ティプトリーというと、CIA創設時のメンバーだったとか、 あらかじめの取り決めで寝たきりになった配偶者を銃で撃ち殺して自分も自殺したとか、 生前は「フェミニズム小説を書く唯一の男性作家」と評されながら後になって実は女性だったことが発覚したとか、 その過激さからプロフィールのほうばかりが注目されてしまうのかもしれない。

が、そんなことはどうでもいいはなしである。 彼女の作品はどれも、その読後感が長く尾を引くあたりで、 自分としてはいつも気になってしまう。 ただ、今回のは感情移入するにはちょっとパワー不足な感が否めない。 ティプトリー唯一のファンタジーというのもあるかもしれないが、 それよりも字が大きすぎとかうすっぺらすぎとか 出版社の最近のあざといやり方が勝ってしまってそう感じさせるのかもしれない。

読後感が長く尾を引くといっても、うまく言葉に表すのは難しい。 彼女の書く作品中の人や物が、 なんらかの意味で周囲から隔絶されているのに、 当人たちが表向きはそれに全く無頓着で何も意識して いないようなところがあって、それがなんとなく引っかかるのだろうか。 なんとなくスクリーンかガラス越しにそれをみせつけられているようで それが気になるのだろうか。

今回の作品もやはり周囲からある意味で疎外された人が主人公だ。 その主人公からまた聞きの形で聞かされる(こわくない)オカルトと いうのがこの作品。 世捨て人のホラ話ともとれる内容ばかりだが、 どの話も時空に透明感と奥行きがあってさらりと聞いていられる。

ティプトリーにしては異色だが、根底にあるものには同じものを 感じとれる気がして安心した。

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